ちょっとかっこいいいボランティア

 周防大島町のよしき君。無事発見されてよかったですね。それにしても発見したボランティアの尾畠さん、カッコ良すぎです。まさに稀代のヒーローといえます。こんなニュースならいくら見ててもいいですね。

 東日本震災のしばらく後かな、5月か6月頃。近所のコインランドリーで毛布か何かを洗濯しに行ったときに60代後半とみれる男性が洗濯が終わるのを待っていた。
小柄だが独特の雰囲気とあまり清潔とは言えない服装で、主婦の利用者が多いランドリーにはちょっと違和感があって数人にいた女性の利用者は離れてそしらぬふりをしていた。
「千葉から来たんだよ、家からじゃない自宅はもっと遠く」
こっちも洗濯があがるまで暇なので好奇心から声をかけると彼はそう答えた。
「これから浜の方に抜けて宮古に向かうんだよ。ボランティアだよ、もう向こうに行くのは3回目だ」
自慢げなわけでもなく、ただ淡々とそう答える彼をちょっと不審げな目で見ていた。ボランティアの中にも悪質な人が少なからずいるという話をよく聞いていたからだった。話を合わせながら少しづつ聞いてみると東日本だけで3回目、その前には新潟にもいったし、いろんなボランティアをして全国を巡っているという。話を聞きながら外に目を向けると古びた前後のカゴにいっぱいの荷物を積んだ黒いママチャリが見える。ダウンチューブには携帯用のスコップも見えて私はちょっと顔をしかめる。
「被災地で使うんだ。まだまだ埋もれてる家もいっぱいあるんだ」
それから彼のボランティア内容をいろいろと聞くことになった。金が無いが時間はあるから自転車で移動していること、季節がよいので夜になったら路上でそのままゴロリと横になって朝を迎えることも。
この風体で路上に寝ていたら警官は怪しまないのか、携帯スコップは使い方で危険な武器にもなりうる、近所の人に通報されたりしないのかと色々考える。
栃木から福島へ入る4号線は長くキツイ坂道が連続している。ロードバイクでさえ慣れない人は音を上げる難所である。まして荷物満載のママチャリで越えるのは老齢の彼にはこたえるだろう、どうしてそこまでしてボランティアに行くのか理解できなかった。なにか裏があるのではないかと勘ぐってしまった。
納得がいかず、もやっとした気持ちで彼のボランティア精神を賛美することもできず、どことなく気まずい雰囲気でいると彼は洗濯が終わって出発の準備をし始めた。一番近くのコンビニを教えると薄い白髪頭を下げて自転車を漕いでいった。
千葉ー福島間はもとより、ここから宮古までは自転車では果てしない距離だ。仙台に勤めていた頃に仕事で何度か行った距離を思い出して他人事ながら気が重くなった。彼をそこまで駆り立てるものはいったいなんなのかずっと疑問に思っていた。

 尾畠さんはよしき君が飴を噛み砕く音がしたとき涙がでたという。無事発見できて渡したときの母親の笑顔、たぶん彼は人の笑顔を見るためにボランティアをしているのだろう。
コインランドリーで会った男性も見た目は怪しげだが純粋な奉仕の精神で突き動かされていたのだろう。それでなければ千葉から宮古まで走れるわけがない。
妙な猜疑心をもつのは心が汚れているせいなのか、ちょっと考えてしまう。