たばこ値上げと小説

 「探偵小説の風景/上」に収録されてる「彼の失敗」(井田敏行著)では、タバコを買う金にさえ窮した愛煙家が一箱の煙草のために犯罪に手を染めてしまう。煙草ひとつで犯罪と言っては大げさかもしれないが、当時の紫煙に煙る客車や煙草の無い辛さの描写が素晴らしい。生まれたときにすでに列車内は禁煙になっていた今の世代の人にはピンとこないでしょうね。
重大犯罪でないために、かえって妙にリアルに感じられて緊迫感があります。ラストのタイトル通りの「失敗」は微笑ましくもあり、思わずほっと胸をなでおろしました。
分煙などという意識のない、日本中どこもかしこも紫煙が渦巻いていた時代のお話で、ちょっと懐かしさも感じられた小説でした。本格推理ではないので念の為。
 
 今はタバコのCMはもちろん、ドラマでタバコを吸うシーンさえも遠慮してるようです。カメラのまえで気にせずプカプカやるのは火野正平さんの「日本縦断こころ旅」だけになってしまいました。
もしかして小説も煙草関連はタブーなのでしょうか?最近とんと見かけないような気がします。
 
 タバコを値上げすれば禁煙する人が増えて、ひいては重大疾病が減って医療費が削減できる、の予定だそうです。
 タバコ税増税は止まりません。今回は増税分も含めて一箱30~40円の値上げとなるようです。一日一箱吸う人で月に1200円ですか。いえいえ、それが罠です。私が吸い始めた240円程度のころから比べるとほぼ倍です、年間87600円の値上がりです。
もっとも今は週に一箱しか吸いません。身体が慣れたので苦しくはないのですが、そのくらいならいっそのこと完全に止めてしまえと言われます。でも月に4~5箱だと身体にもサイフにもそれほど負担にならないのではないかと……禁煙はさらにその次の値上げ待ちかな。

 煙草に関する小説なら源氏鶏太のデビュー作「たばこ娘」がおすすめです。これも相当昔の小説で煙草売の娘がいた時代とか記憶にありませんがそれでも面白く、この作品で源氏鶏太にハマったわけです。今は絶版になってますが、今月「英語屋さん」の新装版がでるようです。もしかしたらこの中に収録されてるかもしれません。って、確認してから書けよって話ですね、嬉しくて先走っちゃいました。
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