戊辰戦争の小説

 明治維新の功罪がいろいろと取り沙汰されてしばらくになりますが、150年をむかえて白河市でも記念事業がいろいろ行われています。

福島民報戊辰戦争150年の連載コラムでは植村美洋(白川悠紀)さんの「白河大戦争」が紹介されました。

 

 「白河大戦争
 白河の旅籠で働く使用人が武士に返り咲くことを夢見て新政府軍の動向を探る隠密行動を命ぜられ、いやおうなしに戦火へ巻き込まれていく小説です。
 著者は白河(棚倉)藩士の子孫のようです。史実を踏まえ、戦争の悲惨さを伝えながらラストは盆踊りでの長州藩士との交流を描いてきれいにまとめています。世良修蔵の苦悩を遊女しげの言葉を借りてあらわしたり、長州藩士の逃げ惑う町民へ見せるいたわりなど、薩長の士をことさら悪くはかいていません。白河惨敗の原因といわれた大平八郎に関してぼかして書いているのも著者のそうした考えなのでしょうか。また主人公そのものもハッピーエンドといったところで終わっています。
150年の時を経て、憎しみを捨てて互いに歩み寄ろうといったところでしょうか。善悪で割り切れる戦いではない著者はそう語りかけます。

「流星雨」
 津村節子会津藩士の娘とその家族の会津戦争からの顛末を描いた小説。会津藩士の娘あきの家族は若松城陥落ののち逃避行の末、斗南郡、今の下北半島へと追いやられます。新政府軍の敗者への残忍な仕打ち、なれない厳寒の土地での暮らし。倒れてゆく家族。そのなかで必死に生き抜くあきとその家族。
やがてあきに旧薩摩藩の男性の縁談が持ち込まれます。仇とは一緒になれない、いったんは断ったものの説得され婚礼のために札幌へと向かうあき。戦争の恨みを捨て幸せをつかむのかと思うのですが、札幌に着いてから唐突に殺された家族や多くの死んでいった者たちの無残な姿がよみがえってきます。あきは母から送られた小袖と妹からの手鏡だけを手に荒野の中へ歩きだします。
津村節子らしいラストです。悲しいですが、戦争を目の当たりにして家族を奪われた人間としてこれが当然なのでしょう。「白河大戦争」の伝えたいこともわかります。ただ当時家族を殺されたうえ略奪、追放、様々な地獄を見てきたものがそんな簡単に納得できないものはあるのでしょう。

 

 落城―戊辰戦争の勝敗を分けた白河口の戦い
 棚倉町出身の著者が白河口の戦いから棚倉城陥落、二本松、会津戦争まで下級武士や民衆の姿を描きながら戊辰戦争の壮絶な戦いと悲惨な状況を描いています。
福島県内の戦いについては詳細に語られており、概略をつかむには非常にわかりやすい本だと思います。一読してから各地の史跡を訪ね歩くのも悪くないでしょう。
戦線離脱せざるをえなかった棚倉藩士、吉羽賢三郎の老後を描いてこの小説は幕を閉じます。読後感はしんみりとして悪いものではありませんでした。