猪苗代湖一周サイクリングと新そば

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 母成グリーンラインからレークラインへと紅葉を見てきたついでに新蕎麦を食べようと思い立った。喜多方ラーメンがお気に入りの母のために寄った食堂で「新そば」ののれんが目についたのでふらりと入る。
土産物屋併設の昭和チックな食堂で長いこと待たされてる間に「ひでよくんのエクレア」とか買って時間を潰すが、昼時は過ぎていて他に客もいないのにもかかわらず妙に遅い、イライラしながらあたりを眺めると、売り場と食堂の間に蕎麦打ちのブースがあるのに気がついた。そうか打ちたてを食べられるのか、ならしょうがない。
とにかく食べたかったのは、10月半ばの猪苗代一周サイクリングのイベントへの初参加の経験から。正確には「CYCLE AID JAPAN 2018 in郡山ツール・ド・猪苗代湖」のエイドで食べた新蕎麦の味が忘れられないからだ。

 その日は初めての自転車イベント参加で緊張気味に走っていた。トイレでビンディングシューズに踏まれた足が少し痛むくらいで寝不足の割に快調だ。なにせ前日は遠足ひかえた子供みたいで四時間ほどしか眠れなかったから。イベント前日に摩耗に気付いて交換したタイヤ、23cから25cへの変更のせいもあるのか、多少瞬発力や軽快さに欠ける印象はあるものの気にならないレベルで流れに乗って軽快に走っていく。まわりは知らない人ばかりなのに勝手に仲間意識をもってしまって妙に楽しい。
長いけれど緩やかな磐梯熱海からの上りを流れに乗って軽快に走る。レイクラインに向かった山岳コースに比べたら坂ですら無いかもしれない。上りきると猪苗代湖の絶景が見える。49号から見える湖岸の景色は少ないだけに何度見ても感動する。
 
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やっと姿を見せた湖もすぐに見えなくなったかわりに、前方にひろがる磐梯山の勇姿が楽しませてくれる。やがてその姿が右方向へ移っていくのを名残り惜しげに眺めながら進んでいく。
野口英世記念館を過ぎて地味な道路を走り飽きたころに遊覧船発着所が見えた。申込時は定員締切だった50kmの遊覧船コース。遊覧船乗りたかったなと思いながらまた湖から離れる。

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 まもなく294号へ折れて西岸に入ると厳しい山道があるのだが、今回のイベントでは山道を大きく迂回して、見渡す限り広い田園風景の中を走るコースとなる。山裾まで広がるほのぼのした稲刈り風景の中を抜け、町中を通り抜けて、ほんのちょっとの唯一の難所を登り切るとふたたび湖岸へ、突然あらわれる湖の絶景に参加者から感動の声があがる。みな思わずスローペースになって団子状態で走る。感動を共有した感じがして、ふと一体感を感じた。ほっとしたのもつかの間、湖が消えるとまたぞろハイペースになって、疲れの出てきた足では、どんどん追い抜かれるばかりで再び孤独に黙々と走り続ける。

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そして南岸に入ると湖岸コースも終盤に入り寂しさを感じてくる。この湖岸のエイドで食べた新蕎麦がその日一番の思い出だ。新蕎麦は冷たいので食べてください、という声に誘われて食べた蕎麦に感動。用意した補給食も早めに食べてしまって胃の中はからっぽだったので、思わず温かいほうでオカワリもう一杯。
うん、やっぱり冷たいほうがいいかも。
その後、最終エイドで初めて食べたクリームボックスを堪能したあと、湖を離れてゴールへと向かっていった。足はくたくたで尻は痛むが、それでも物足りなさを感じ、もっと走りたいと思うところが自転車イベントの魅力だろうか。
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 そんなイベントの思い出にひたっていると、やっと蕎麦が運ばれてきた。桧原湖一周が余計だったか時計は2時過ぎを指してる。すっかりお腹がすいていたので、蕎麦を水を飲むようにたぐり、天ぷらを飲み込むようにたいらげ、蕎麦湯を一気に飲みこんだ。ん~物足りない…が、おかわりを頼むほどの味でもなかった、かぼちゃの天ぷらも揚げ足りない気がする。エイドでの新蕎麦は、あの雰囲気の中でこそ味わえるおいしさだったのだろう。

 帰ってからツールド猪苗代のパンフレットをもう一度見ると、ゴールで「つるりんこ鍋」が用意してあったことに気づく。食べ逃した悔しさ、もったいないとかでなく、紅葉を見に行ってずっと寝ていたようなものだ。
こうなれば来年も必ず出場して新蕎麦とゴールの鍋を堪能しよう。問題はこの日、車で通った母成からレークラインを走る山岳コースのカレーを味わうかどうかだけなのだが。