クリームボックスを初めて食べて

 先週セブン-イレブンで「クリームボックス」を買った。
福島のソウルフードだとかなんとか言われてるらしいが、そう知ったのは先月のことだ。
6枚切りなのかな、厚めの食パンの上に甘くて白いミルククリームが乗っているだけなのだが、これが妙に心を揺さぶる食べ物なのだ。
 先月の猪苗代湖一周のイベントのとき、酪王カフェオレと共に提供された最終エイドで食べたのがそれである。甘いのは嫌いじゃないが甘すぎるのはいただけない、はずだったのだが……いきなり無遠慮に飛び込んでくる暴力的な甘さに打ちのめされた。くどいくらいの甘さなのだが、なぜか抵抗なく口中へ染み込んでいく。共に出された酪王カフェオレで口中の甘みが消えてしまうのがもったいないくらいだ。打たれすぎてフラフラになったボクサーがリングサイドへたどり着くように提供場所へ行き、美味しかったことを伝えてどこで売っているのか尋ねる。すこし面食らったような顔で郡山駅イトーヨーカドー店内で売っていると教えられた。イトーヨーカドーならそのうちに行くこともあるだろう、今度買いに行きますと言って離れた。あとで調べるとこのパンは郡山市あたりじゃ有名で、いろんなパン屋さんで作っていると知る。そういえば須賀川市のパン屋で似たようなのを食べた記憶もあるようなと怪しげな記憶も浮き出てきた。
 
 それからひと月、駅はもちろんイトーヨーカドーにも寄る機会がなくって、自分でつくろうとクックパッドでレシピをプリントするもののコーンスターチが何かもわからないので放っておいた。忘れかけてるときに昼食を買いにいったコンビニで偶然巡り会えて自分の強運や引き寄せ力にめまいがしたほどである。ナポレオン・ヒルでさえこうはいくまい。
牛丼のついでに買っておやつに食べたのだが、ふわりとした食パンにやわらかくたっぷり乗ったクリームに先月の感動がよみがえり夢中でかぶりついた。しかし、変だな。これは違うだろう。パンそのものはもっちりしていて食感もよく、クリームもたっぷりで量は申し分ないのだが、いかんせん味が薄い。というよりも無いに等しい、といっては大げさだがエイドで食べたクリームボックスと比べると歴然としている。
「これを作ったのは誰だ!」海原雄山風に怒鳴り込みたいところだが、美味しんぼも遠い昔の漫画なので若いコンビニの店員も知るまい、変なオヤジと思われるだけだろうから止めておく。そもそもセブンイレブンの企画であって名店の味を再現したものでもなんでもないのだから。
それにしてもガツンとくるショッキングな甘さがないのは残念。練乳の味が少ない気がするが万人受けを狙ったそういう味なのかもしれない。
ネットで確認すると東北3県限定発売だとか。この程度なら限定でよかった。
期待ハズレでスカされて、余計に食べたくなるのは世の常。イトーヨーカドー郡山店への出撃計画を着々と練り始める。

クリームボックス