1円スマホってなくなったと思ってたら

 年も明けて4日目の朝、スマホがつかなくなっていた。電源が入らない。バッテリーは昨日の夜で70%はあったのに。いつもは電源を切らないのに正月ぐらいはスマホも休ませてやろうと思う心遣いが裏目に出たのか? まあとにかく仕事はじめの日から携帯が通じないのもマズいだろう。機種名で検索するとわりとありがちな故障らしくサポート対応で送り返せば修理してもらえるらしい。しかしそれまで下手すりゃ1~2週間とかw 通販で格安スマホ契約するとこんな時に困るんかな。

メールはネットでも対応できるものの銀行振り込みはスマホ認証にしてしまったし、スマホに確認コードを送るサイトも増えてるし、スマホが無いと手も足も出ずまったく不便極まりない。

30分ほど考えてから別のキャリアで新しいのを購入することに決めて、とりあえずMNP番号を申請する。いろいろ検索するとOCNの550円契約がかなり魅力的に映る。そのままネット契約しようかとも考えたが近所の店舗で在庫買えばすぐに使えるし、トラブルの時も実店舗のほうがなんぼかマシだろうと考えて近所のドコモ店舗へ行って翌日の予約をとった。

 さて次の日、悲しいことに対応してくれたのは男性スタッフだった。AU店舗が去り、ソフバンの店員激減の時期でもドコモだけはCAみたいなカッコの女性スタッフであふれていたのに… 今ではカウンターにアンちゃんスタッフがチラホラ見えるばかり。そういやau解約の時も店舗まで出向いたのにもかかわらず男性スタッフに「ほれ!」という感じで放るように渡されたケータイでスタッフとお話ししながら手続きしたっけ。店舗に人はいなくなってるのだ。

去年のことだがNTTの窓口は廃墟になってたし、東北電力無人の受付にポツンと置いてある電話機でスタッフとやりとりするし、銀行も支店や窓口が減った。コロナのせいだけでなく、もはや窓口業務は電話やネット対応があたりまえになっていたようだ。

 唯一私が若い女性と口をきけるチャンスが奪われて行ってるのだ。もうこの先永遠に若い女性と対面で話すことができそうもないってことなのだ。そのうち店舗に出かけてもAIだったりロボットの対応になっったりするのかな。

 そんなことを考えて落ち込んでいる私に男性スタッフは明るく話しかける。今のが大きすぎるし重いので小さめのが欲しいこと、耳が悪いので音声がきれいな機種が欲しい、ほとんど通話とメールが中心であることなどを伝えるとIphoneのスピーカーが聞きやすいかどうか何度も試してくれた。音質は良いし、今の機種よりはるかに小さくて軽いので予約する。決してエロサイトはIphoneのほうが広告が少なくて見やすいなんていう不純な動機ではない。

 「タネも仕掛けもない1円でございます」翌日MNP番号をもって出かけるとそう言って渡してくれたスマホは片手でも持って操作できる軽さと大きさだった。しかもONCの月550円の契約のためにここまで丁寧に対応してくれるのかと、世界的に減り続ける窓口業務を思うと頭が下がる思いだった。

  「新機種1円」の広告につられて店舗に出かけると、高額な機種や無駄なオプションばかりつけられてひどい目に合うとか言うのは大昔の話だったようだ。

少なくともドコモの店員さんは私の話を丁寧に聞いてくれて、このしなびたケチ臭いおっさんにちょうどいいスマホを売ってくれた。

子ぎつねにてぶくろを売ってくれた人間のおじさんより、小川洋子フィレンツェの手袋屋さんよりもはるかに親切だった。

最後はこのしなびたオッサンを店の外まで見送ってくれた。

設定の済んだばかりのスマホを自転車のカゴに入れて走り出す。

「ドコモのお店は、ちっとも怖くなかったよ」