中銀カプセルタワービルの思い出

 中銀カプセルタワービル解体の様子をテレビでやっていた。あの丸窓のついた積み木を重ねたような個性的なビルだ。

ついこのあいだ原田ひ香の「おっぱいマンション改修争議」を表紙に見覚えがあると思って手に取って読んだばかりだ。小説自体はつまらなかったが中銀マンションが舞台になっていることに驚いた。

 中銀マンシオンの創業者は地元福島県の出身である。大学卒業時に母が知り合いから地元の村にゴルフ場や老人ケアマンションを建てる予定があるらしいと情報を仕入れて実家から通える範囲だし、そこに就職すればいずれは地元に帰ってこれるのではないかということで「是非に」ということだった。

卒業当時、将来になんの希望もなく適当に金を稼げればいいなとしか考えがなかった俺は、とりあえずの就職ならわりとどこでもよかった。

いまよりははるかに景気のいい時代で、国民みなが将来にわたって給料も株価も土地もどんどん上がり続けることになんの疑いももたなかった頃の話だ。

根拠のない自信でもって、自分はその気になればいつでもどえらいことをやってのけると自信があったから若いうちは勉強の意味で一流企業と言われるところ以外に身を任せるのもいいかなんて今考えると身の程知らずもたいがいにしろといいたくなる。

 就職課に行くとそこへ入社した卒業生もいるようで会社資料もあった。(今でいうFラン大学なので求人が出ているだけでもありがたいのだが、当時はウチの大学に求人を出す会社などたいしたことねーやなんてとんでもないことを考えていた)わずかでも縁があるのなら頑張りなさいと就職課の人に励まされて中銀タワービルへ向かった。

設計の黒川紀章の名前ぐらいは知っていたが、自分がその気になればこれぐらいは設計できるだろうなんてテキトーな自信であふれていたのでそれほどの感動はなかった。むしろこのビルに感心したら負けだなんて思い込みで心がいっぱいだった。とにかく嫌な奴だったの学生時代の俺。

 面接の時にあのカプセルの一室に入ってぼんやり外を眺めていると入ってきたのは40代くらいの女性だった。当時女性管理職はまだまだ珍しい時代だった。なかなか革新的な会社だなと思う反面、もし総務課に配属されたら女の下で働くのはいやだなぁなんて女性蔑視みたいな部分が普通にあった俺。しかも入社するとも決まっていないのに。

それでも積極的に何度も会社訪問して熱意を見せろ、なんて就職のための鉄則みたいな言葉を鵜吞みにして彼女が嫌な顔をするまで何度も訪問した。同じ大学の卒業生の社員にもアポとって面会するも特に質問もなくって会話が続かなくって閉口した。

社長の親戚筋からどのように話が伝わっていたのかわからないが、かなり好意的な丁寧な対応をしてくれたのではなかったか。

にもかかわらず地元への関連会社設立がいつの話かわからないという話が見えてくると内定をもらっていたにもかかわらずあっさりと断ってしまった。

内定を断ったことは今でも後悔しているし申し訳ないことをしたと反省もしている。もっとも俺が入らなかったことはその会社にとってはよかっただろう。今にして思えばだが。

 

 じつのところマンションの販売とか自分にはさっぱり自信がなかったから入社したくなかっただけなのである。へたれなのであった。しかしそんなことはおくびにも出さずに地元就職が最優先という言い訳で最終的にはつまんないところへ就職を決めた。

母は最後まで中銀を断ったことをもったいながっていたようだが、父は地元へ戻れるのならなんでもよかったようで喜んでいた。自分としては実際それほど地元へ戻りたかったかわけでもなく本当のところ東京で過ごしたかったのが本音だ。

ただ地元へ就職すれば地元の友人とも遊べるし実家暮らしで金もかからないし車も買ってもらえるといったつまんない理由だった。本当につまらない男だった学生時代の俺。

 地元へ就職したあとも、いまでいう「まだ本気出してないだけ」状態でいいかげんに過ごしていい加減な人生をすごして今に至る。

まだ「本気出してないだけ」ってのは本気を出しても結果を出せないのが怖いから本気になれないのだってことを最近「二月の勝者」を読んで知った。もっと早く読みたかったわ。半世紀遅かった。

 しかし当時あのまま東京で暮らしていれば違う人生だったのかなとか、当時のトレンディドラマみたいなことがあったかもしれないなんて夢想する。まあ実際のところ面倒なことからは逃げ回って、結局似たような人生を送ってたんだろうけどな。ましてドラマっぽい人生など間違ってもありえなかっただろう。

そんなことが理解できるまで年をくったわけだ。

でも時々そうして「あの時ああしていれば」なんて妄想に入ることが増えたのも年を取った証拠なのだ。

帰宅困難地域避難指示解除~夜の森公園

 いよいよ避難解除が始まるところへもってきて桜が満開で連日のニュースになった富岡町の夜の森公園。

避難解除の前日に行ってみた。

福島空港あたりから無料のあぶくま高原道路を経由して富岡町へ向かうが、けっこうな山道である。コンビニもひとつ通り過ぎると次は無かったりする。自販機さえもなかなか見当たらず喉が渇いたまま夜の森公園へ到着。

トイレを先に済ませなければと探し回るがコンビニがどこにもない。食料品店らしきのはあるものの開いてない、長期休業中といったところか。6号線まで出てGSへ入ろうとするがこれも休業というより閉鎖中なのか長らく人の気配がないようだ。

あきらめて雑木林のなかで用を足したが、人が住んでいないというのはこういうことなのかと街なかへもどる道々考えてしまった。

多分、公園内か駅のあたりに公衆トイレがあったのだろうがあわてていて考えが回らなかった。

駐車場はあちこちあるようだがいちばん景観の良さそうなあたりで駐車する。

 

 見事な桜並木である。車道まで出て撮影している人も多い。しかし迷惑をかえりみず車道の真ん中に駐車してドアを開けたまま撮影していたり、自撮り棒で動画撮影しながら車道中央を歩いていたり、自分勝手な高齢者が多く見受けられるのはたまたまなのか。

 

 桜の時期とはいえ、これだけの景観がある街を強制的に離れなければならないのは住民にとっては悲しいことだったろう。避難解除になっても学校や仕事の都合でそう簡単には戻れない人も多いのだろうな。

トイレを探すときに街並みを見て回ったがどの家もそれほど古びてはいないようだ。震災当時ならまだまだきれいだったろうに。

アパートも全空きのまま放置されていてもったいなく感じた。オーナーの保証金とかはどうなっていたのだろう。他人事ながら心配してみたりする。

 

 たっぷり桜を堪能してから車に乗り込む。ゆっくりと走って桜並木を抜ける。十分に距離があるので車で走ってもそこそこ楽しめるので足の悪い母は大喜びだ。

ぜひまた来ようと思う。そのときはコンビニやスーパーも出来てるといいのだが。

 

 

花登筐の銭の花(細うで繁盛記)

  とりあえず面白そうだから読んでみようとかじゃなくって、話題になってるものや映画化ドラマ化したものなんかの話を聞いてから手に取ってみる。

去年だと「老後の資金がありません」の谷垣美雨とか。それをほとんど読んでしまって今年になってからは「3千円の使い方」の原田ひ香のを読みまくった。(この人の文章は好き)なんとなく手に取ってみて面白かったのは秋吉理香子のミステリーかな。

 アンソロジーなども読んでみるが気に入った作家さんにはそうそう出会えない。

 

 そんなんでふと花登筐が読みたくなった。「はなと こばこ」→花、登る、筐体(きょうたい)と、グーグル検索でない時はいちいち面倒な入力をしなきゃならない。

狙っているのは「銭の花」細うで繁盛記の原作本である。

最近だと沢口靖子主演でリメイクされたが1970年当時の放送に比べると妙に明るすぎて残念である。

 「銭の花」は何種類かでているようで10巻揃いを買えばいいのだろうが今の時点で売り物がない。とりあえず値ごろな上、中、下(一~四)の六冊と、7、8巻を手に入れた。

 大阪の高級料亭「南地楼」の創業者女将を祖母に持つ加代。祖母が亡くなり、南地楼も落ちぶれて騙されて嫁に行った先の「山水館」で舅、小姑、旦那までも敵に回して奮闘する話だが上中下巻ではきれいにまとまっている。7、8巻は改心したかに見えた義姉正子が舞い戻り、その策略で山水館を追い出されたところで終わっている。

これはなんとしても次が読みたい。しかしネットフリマもオクも古本屋サイトどこにもない。

読みたい読みたいとなるとどうにもとまらない。確定申告の貸借対照表の数字がおかしいのだがそれを放っておいて探している。

 ネットで県内の図書館を探すと1~10巻まで会津若松にあるのを確認。しかし須賀川図書館で上中下と9巻10巻が見つかった。ネットは便利だ。古本も探しやすいし、図書館の蔵書も自宅にいながらにして探し出せる。

まあコツコツ古本屋や図書館を巡り歩くのも楽しいし、何年もかかって探しだしたときの喜びはいいもんだけど、残り少ない人生なのだからここはネットに頼らせてもらおう。

 新しくなった須賀川図書館を利用するのは初めてだ。ウルトラマン通りを北に向かいガラモンだかピグモンだかの哀愁のある背中を右に見てから左側だ。満車の看板が出ているがすぐに一台出てきたのでタイミングよく入ることができた。一応市内中心部なので2時間だけ無料駐車ができる。

しっかし、きれいででかい。市民交流センターとして多くの人が訪れている。

 正面から入ると何故かゆがんでいるホールが目に付く。一緒に来た母が倒れはしないかと心配で振り返るとやはりフラフラしていた。何のための傾斜なのか。地震の被害?遊水地なのか、今日は手作り小物の販売をしているが、時にはパターゴルフのイベントでもするのか?とにかく不思議な空間だった。

 広い。吹き抜けの効果もあって実際より広く見えるのかもしれない。3階の図書館を延々と歩く。書架の圧迫感も少なく心地よい空間だ。書庫の本を借りるために4階への階段を上る。妙に長い?息切れがする。ふと見れば天井高もぐっと高いような気もする。4階にはその日は空手教室もあったようで筋骨隆々の指導者さえもエレベーターで上がってくる。なるほど、この建物を4Fまで階段使ったら鍛えぬいた空手家でもぶっ倒れてしまうだろう。

 一部は地熱エネルギーも利用しているらしいが、この原油高のご時世この広い空間の冷暖房費がどれほどかかるのか想像するだけでチビりそうだ。須賀川市の財政は大丈夫なのかいらぬ心配をする。

 「なんかあちこち破れや汚れがありますけど、そのまま返却してもらってけっこうですよ」

ようやくたどり着いた4階の書庫カウンターで目当ての本を出してもらった。なるほど職員が恐縮するのも道理、書庫から出てきた本は「かなり状態が悪い」といったところか。これなら他の巻の状態も想像がつく。7,8巻がないのは多分擦り切れてしまったか汚れがひどくて廃棄されたのかもしれない。あるいは震災で崩れたときにバラバラになったかもだ。とくに9巻の汚れはひどかったが読めるだけありがたかった。この状態でよくぞ廃棄されずに残っていたものだ。

 外に出てあらためて建物を眺める。昔は赤トリヰ(←これも変換がやっかい)と郵便局がならんでいたんだっけ?高校時代は毎日のように眺めていた景色なのに、あたりの景色も様変わりしていて記憶を呼び起こすこともできない。明治維新の頃に安積疎水に尽力した小林久敬の実家である駅逓があったのがこのあたりなのか。今車が並んでいるところへ馬が並んでいたのかもしれない。

 パーキングの精算機を操作すると、それだけで時間内なのでロックが外れた。受付の美人のお姉さんが言ったとおりだ。

 

 急いで家に戻って読み始める。

この作家さんの本は一気に読めてしまう。しかし10巻は長すぎた。土肥へ流れてからの展開も濃すぎて何が何だか落ち着かない。最後も一気に終息へ向かって超展開で片が付いていく。ここまでやるなら南地楼の再起成功まで見届けたかった気もする。

 読み終えてから10冊並べて感慨にふける。

いやそんな場合ではないのだ。確定申告が途中なのである。いくら調べても合わない科目をまた調べなければいけないのだ。

現実逃避の時間は終わった。また痛む腰をかばいながらパソコンへ向かい、いつ終わるとも知れぬ作業に没頭するのだ。

 かなり古い本は揃ってるときに手に入れとかないと巻が抜けたり、違う出版社のでダブったり無駄がでてくる。

あと5年後、2028年は花登筐の生誕100年なのでもしかしたら新たに全集とか出たりするかもしれない。それまで元気でいられますように。

 

 

 

 

 

 

 

鳳坂トンネルと羽鳥ダム

 天気が良いので去年開通した鳳坂峠のトンネルを通ることにした。

118号線を上るとわりとすぐに現れる。あたりまえだけどまっすぐ続いている。

これが新しいトンネルか、なるほどピカピカではある。

トンネルは意外と早く抜けた。トンネルに入ってからリセットした距離計を見ると2.4km。2.5kmってとこか。思ったより短かったな。土湯トンネルや甲子トンネルより比べるまでもなかった。

 こうなるとくねくね曲がって走っていった道が懐かしい。

天気の良い休日に(冬の雪道以外)のんびり走るのには快適な道だった。

 しばらく走って羽鳥ダムで休憩。ダム湖は一面氷の世界。

 下りて大内宿へ寄ってみるが上の駐車場は除雪してなくて入れない。
下に止めてと思ったが雪道を歩ける装備ではないので遠慮しておく。雪灯籠見たかったな。

 289号に入って白河方面を目指すが途中の店でカツ丼を食べる。食べて違和感。おかしい、ああそうか、卵の量が足りないのだ。いつもふんわりあふれるくらいに包んでいる卵が妙に少ないのだ。カツの端っこふた切れ分ぐらいに卵がかかっていない、いつもの半分くらいに感じられた。

いくら会津とはいえ、ソースカツ丼よりも煮込みかつ丼が食べたいのだ。これでは美味しさ半減なので卵が値下がりしたらまた来るとしよう。

 そして甲子トンネル通過。こっちは4.3kmあるらしく慣れると快適だ。県内最長トンネルは2017年開通の栗子トンネルで8.9kmあるらしくトンネルが苦手な俺は通り抜けることができるか不安で通ったことがない。

感覚的に最も長く感じたのは1kmに満たない猪苗代湖の黒森トンネルを自転車で走った時なのだが。

 

最強カンパの氷の世界

 史上最大の寒波襲来とか毎日のように連呼されていた。

そういう時に限って予報が外れてしまったりするのだが、最近の予報は正確でしっかりと寒波がやってきた。

子供の頃、大昔ならこの程度の寒波はいつもの事だったが最近はめずらしい。

それでも家の断熱性が良くなってるので、氷点下8度や9度なんていっても家の中にいるかぎりは死ぬことはない。昔は外気温とそう変わらなかったりして、冬の朝は本当に地獄だった。大人になったら絶対に南国で暮らすことに決めていた。

それほど愛着のある地元でもないのに結局は今も生まれ育ったところで暮らしている。

夜も寒いうえに日中の最高気温が0~3度とかだと終日、家の中も冷え冷えとしていて部屋の中はまだしもトイレや部屋への移動のたびに廊下や階段を歩くだけですっかり冷えてしまう。

 さて、外の様子はとみると雪が少なかったせいで大通りは道路も溶けているが細い交通量が少ない道路は雪が残って凍結している。

近所の公園はどんなものかと出かけ見ると一面の銀世界だった。

白鳥やカモは何処へ? よく見ると中央付近に固まっているのが見える。氷上を歩けば早いのだが、さすがに日曜で人出も多いので遠慮して周回することにした。

もしや足元が凍って動けないのではないか?

眠っている間に足元が凍りつき動けないでいるカモを縄でまとめてから鎌で足を切り落として持って帰ろうとした権平。カモが飛び始めてあちこち回った後に塔のてっぺんに置き去りにされたってのが「カモとりごんべい」のあらすじだと思っていたのだが調べてみるとそんな話ではなかった。残酷すぎる、子どもの教育上よくないと消されてしまったバージョンなのだろうか? それともワシの勘違いなんだろうか。

 まあとにかく近づいてみるとカモは凍りついているわけではなくて、わずかに融けた氷の周りに集まって座ったり歩いたりと自由にしていた。残酷バージョンのゴンベエの出番もないようだ。

今夜の鴨鍋はあきらめて写真だけ撮ってかえるとしよう。

カメラを構えると寄ってくるのがかわいい。

白鳥はしらんぷりだけど。

買い物があって南湖の近くを通ったが、こちらも全面凍結。

最高気温も2~3度で凍結路面有では自転車は当分乗れない。

ただ物干し代わりになるのみ。

こちら個人的には最強カンパのアテナ11仕様である。

  追記

2/6現在、ほぼ氷も溶けて白鳥たちも楽しそうに泳いでいました。

写真をとる少し前、二人組が白鳥に餌をあげていて遠くで休んでいた鳥たちも餌のところへ飛んでいきました。

多分ボランティアの人なのか、公園管理課の許可のもとやってるのかな。

 

白鳥にエサを  猪苗代~大池~高野池

 開通したばかりの鳳坂トンネルを通ろうとしたら間違えて猪苗代へ出てしまった。

せっかくなので長浜まで走ってカモに会いに行った。

その日は駐車場に集まっていて人間など気にせずに自由に歩いているのでこっちが気を使って踏まないように注意して歩かなければならない。

大量のカモが足元でうごめいているのはカワイイ。途中のコンビニで買った食パンはまたたくまに無くなって、ちょうど雪も降ってきたのでノーマルタイヤでそそくさと帰ってきた。

 翌週午後が空いていたので矢吹町の大池公園まで車を走らせる。前日スーパーで買った安売りの食パン8枚切りをかかえて降りる。

白鳥だけでない、カモもいる、サギもいる。白いのもグレーのもいろいろだった。

なるほどハクチョウはけっこういるもののエサをあげてる人はいない。池のたもとでバックに手を入れてもぞもぞしている女性がいたので聞いてみると、エサをあげたいのだけれど人目が気になって躊躇していたらしい。

なるほど、駐車場には野鳥への餌付け禁止の看板があった。

しかし、まてよ、以前来たときは餌やり推奨の看板があったはずだがと思い出し、記憶を頼りに池を廻り始めると日本庭園の付近にでかい看板が立っていた。

「餌をあげるときは同じ服装でくるといい」などと親切な看板だ。

これはどういうことなのか?

いわゆる「ダブルバインド」(二重拘束)の罠である。

ふたつの矛盾したメッセージで、どっちにしていいかわからずにパニックになったり、精神が崩壊したり、ひきこもりになったり、萎縮性胃炎から逆流性食道炎になったりすることらしい。胸やけがしてすっぱいものがこみあげてのどのあたりがつかえる感じでこれは本当にきついのだ。胸痛がすると、また狭心症が再発したのかと担当医にくどくど説明して困らせてしまったりする。

都市計画課に電話してどっちにしていいのか聞いてみようとも思ったが、役所の人間とうまく話すのが苦手なので放っておくことにした。

そう、近くにも白鳥の飛来地で有名な高野池があるのだから。

 

 大池から車で郡山方面に向かうこと数キロ、訪れるのは20年ぶりくらいだが注意していたので看板を見逃すことはなかった。中途半端に道を知ってるとナビを使わない。でもあやふやなので、しっかり迷ったりするのだが今日のところはうまくいった。記憶と違うのは新しい駐車場ができていたこと。なるほど広い駐車場から池全体が見渡せるようになっていた。

 

しかし白鳥の姿はない。鴨ばかりである。カメラを据え付けて撮影をまっている人に聞くと池の奥のほうにいるらしい。残念だがスマホ依存症で乱視のひどくなって信号の矢印さえ見えなくなった俺の視力では確認できない。

それでもせっかく来たので食パンはカモに全部あげてから立ち去ろうとするときにカメラマンが声をかけてきた。

時間帯があるんだそうだ。白鳥たちの食事時間だ。午前中11時ごろが狙い目らしい。礼を言って車を出す。

 

  数日後、午前中にでかける。到着は10時半。なるほどカメラマンの言ったのはウソではなかった、数十羽の白鳥がワサワサしているのだ。ガードを乗り越え、ちぎった食パンを金網ごしに思い切り放る。白鳥の群れの真ん中くらいに落ちるように全力で投げる。めっきり力が衰えているので狙い通りにはいかないが、それでもちょうどいいくらいに手前の群れの真ん中に落ちる。

どんどん鳥が集まってくるのが楽しい。夢中になってふたりで8枚のパンを消費するのにそう時間はかからなかった。

その間にも車が2~3台止まってはチラ見して去っていった。

エサをやり終えて帰ろうとする頃に訪れた二人組は、駐車場の東の端に車を止めるとガードレールの終点から入って桟橋へと歩いて行った。なるほどエサやり用の(観賞用)のステージがあるらしい。

鳥たちもわかっているのか、人が桟橋に立つとあっというまにそちらめがけて泳ぎだした。ひとことも礼を言わず、お辞儀もせず芸も見せずにだ。

もらうだけもらって終わると知らんぷりで帰っていくドライさはウチの猫なみだ。

でもかわいいからまた来よう。

 

タバコ臭のアパートの部屋のリフォーム再び

 長くいていただけるかなと勝手に思っていた入居者が、まさかの退去で萎縮性胃炎になったようだ。7年前にピロリ菌は駆除してあるので退去のストレスが原因だろう。

ヘビースモーカーの部屋はしっかりとタバコの香りに包まれて、脱臭するのにどのくらいかかるのかと気が重くなった。

 

 入居者様とは多少やり取りはあったものの、壁紙の修繕をいくらかいただけることになってホッとする。

でも修繕費のほんの一部。ヤニの付着はLDKだけだが、臭いはホールの壁やドアまでしみついている。すべて貼りなおすしかない。DIYでやれば壁紙と糊代だけで済むのでホールからトイレ洗面まですべて貼りなおすことにした。

前回と同じなら6万程度で済むのだが、今年から壁紙も3割から5割の値上げなので10万ちかくなるかな。

 

 なんか今回は不調である。とくに安く上げるためにメルカリで買った長期在庫の壁紙が、乾燥した場所で放置されていたせいか、パリッパリに乾燥して引っ張ったら破れたりで散々である。しかも貼ってみると継ぎ目にスキマが空いたりして出来が悪い。モノが悪いのか腕が下手なのか。

 

慣れてきたせいで求めるものが高すぎて自分の腕が未熟に感じるのかとも思ったがそれも違うようだ。やっぱり普通に仕上げが下手なのである。しかもよりによって目線のあたりのスキマがよけい広い。柄物はズレていて合わないし、下地処理が雑で凸凹目立つし、素人仕事もいいとこである。

退去した人が「壁紙の貼り方が雑で素人だね」と捨て台詞を残して去っていったのを思い出す。

トイレの配管の裏の仕上げはガッタガタである。洗面台は新品になったけど下の台のぺんき仕上げはムラムラしてしまった。養生テープを雑にはがして物入の扉をハゲさせてしまった。

 

 壁紙が値上がりしてるところへ、発注ミスで足りなかったり施工ミスで追加したりで二度発注した分の送料がもったいない。いつもはミスを計算にいれて余計に頼むのに、今回は値上げのせいできっちり計算通りの尺しか頼まなかった。そして1Mや2Mで頼むのも気が引けて余計に頼んだ分で予定より追加金額がどんどん増えていく。間違えて発注した分も返品はきかないし。

 そんなこんなで毎日落ち込みながらなんとか2週間で見れるようにはなった。仕方ないのでこれで完成としよう。細かいことを気にしない人に入居してもらうのだ。

タバコの臭いはほとんど消えたと思われる。すえたにおいがするのは良い香りのするご婦人にでも入居してもらえば解消するだろう。

 

メルカリで壁紙は買わないようにしよう。

自信がない時は余分に発注しておこう。

のりはゆるめのを多めにつけよう。

ジョイントのカットは角度に注意して軽く切る。

腕はともかく柄の選定はプロ級であろう。

 

いまさらながらの反省点を考えつつ次回につなげよう。

まあでも当分壁紙はいいや。

 

スキマが気になるので貼りなおしたら全然違う色柄だったので再びの貼り直し。

貼る前に気づかないってところが俺様である。

洗面ボウルは残して上部だけ交換。安くは済んだけどボウルの色褪せたのがかえって目立つかな。

アクセントの花柄の壁紙はパッと見はきれい。柄合わせはイマイチ。

 

ホールのアクセント。これで500番台の壁紙である。本物っぽい立体感もあって今回一番のお気に入り。自宅廊下もこれで決めようかな。(柄合わせ無視だが違和感なし)

かえってこれだけ細かいと柄合わせの不備が目立ちにくい。

均等なレンガ柄は目地の部分で合わせればいいのでかえってやりやすい。

ふすまは板襖なので和風の壁紙で済ませる。

畳屋さんが「ふ~ん」と言って撫でていったので多分まあまあなのであろう。

自宅と同じ腰板風にしてみました。ちょっとミスしてタンクの裏はヨレヨレに(見えないけど)