工場 (小説・女工哀史Ⅱ)

 年末に仕事関係で読まなきゃいけない本が山積みで、買っておいたけどそのままにしておいた「奴隷」の続編「工場」。ようやく読了です。
読み始めれば二晩で一気に読んでしまいました。

「奴隷」では劣悪な労働環境や工員の様子が描かれ、そこで必死に生きようとする三好の姿に好感がもてるが、「工場」では自殺未遂からたち直った三好が社会主義にのめり込むのだが、工場相手に闘っては惨敗するばかり。クビになってからワリの良い仕事を見つけ、再会した菊枝と暮らして小さな幸せをつかみかけたところでまた愛した女を失ってしまう。再び労働闘争への思いに駆り立てられ東京へ向かうところで小説は終わる。
当時のプロレタリア文学なので悲劇的なのが当然なのだろうが、近年のエンタメ小説に慣れすぎたせいか不快感さえ感じる。
女工哀史」はウソ・おおげさ・まぎらわしい、事実はそれほどひどくないといった声もあるが、労働環境においては個人の感じ方・捉え方も違うのかもしれない。
紡績工場が増えていくに従って熟練工が不足したため、ベテラン女工はわりと良い待遇も受けるようになったのか、第二編で「小牧お孝」は出所後、大阪へ舞い戻るが待遇の良い仕事へつくことができて、最後は憧れの東京へ移り暮らしているとある。
 
 伏せ字に関してはこの巻は少ないものの、さっぱり見当のつかない箇所もあったりしてイライラしっぱなしである。やや大仰な表現で独自のレトリックが冴える作家だけに、消された部分を読めないのは残念。ハヤシライスを食べた後、はじめて菊枝と結ばれた夜の情景さえも
『──その夜、江治は彼女の××××××××二十三歳の童貞を静かに滅ぼしてい行ったのである。』
ロマンも何もあったものじゃない。
 
 新刊待ちの間、ついでに中国の女子工員のルポルタージュも読んでみた。
「現代中国女工哀史」(レスリー・T・チャン)は田舎からでてきて工場で働く若い女子工員の姿を描いている。「中国絶望工場の若者たち(ポスト女工哀史)」のように劣悪な労働環境や反日感情に言及してるわけでもない。ただの一工員で終わりたくないと勉強や資格の取得に励み、少しづつステップアップしてホワイトカラーの仲間入りを果たしていく少女たちの姿が書かれていて読後感は良い。
後半あたりの著者の一族の歴史を語る戦争や革命の流れの部分は興味ない私には退屈で余計だったが。