さくらももこのエッセイ

 ああ、やっぱり同年代だったんだな……訃報を見てそう思った。
53歳はちょっと早すぎたな。かわいそうではあるが特にファンでもないのでそれだけである。

 初期の頃のアニメは今と雰囲気が違ってほのぼのしていたようなのだが、最近放送されてるのは目にする機会もあるが、ちょっと合わないなといった印象。
 それでも全体的に見れば質の高い作品が残っているのだろうし、子供時代をちびまる子を見て読んで育った人たちにはひどく悲しい出来事だろう。
……と思っていたのだが世間の反応はネットも含めて落ち着いているというか冷めてるかもだ。
これはやはり彼女の書くエッセイによる影響だろう。ちびまる子のアニメや漫画に思い入れのない私でさえ、初期のメルヘン翁や成功してからの焼きそば屋のエッセイなどを読んで、かなり不快感を感じたものだ。
作者の個性と作品は関係ないだろうとよくいわれるが、作者自身の子供時代のほのぼの系のお話なのに、そのモデルになった爺様の死を笑い飛ばしたり、成功して金を持ってるのをいいことに人を見下すような行動や発言が痛々しく不快。ワイドショーではそのへんの反応も見越したのか、著者のあとがきによる解説を入れていた。
エッセイは実話ではなく、しょせん作品だから嘘がほとんどでかなりの誇張があるよとどこかの作家が言ってたが「さくらももこ」に関してはやはり守るべき一線みたいなものがあるのじゃないかと思う。清純派女優が男関係が派手でスキャンダルまみれだったとか、お笑い人気タレントなのに実は普段の態度が最悪だったとかが不快感をかんじるように。
ちびまる子ちゃん」のファンがエッセイを読んで漫画やアニメの世界観も壊れてしまったというレビューなどを見ると罪深いものがあるなと思う。


 訃報をきっかけにまた著作が売れているとか。
ショックを受ける人がこれ以上増えないことを祈るばかりである。


 まあ亡くなってしまったことだし10年近くも闘病で苦しんでいたことを考えると、同情こそすれ非難めいた事を書くのは失礼だろう。
そう思ってあらためて「もものかんづめ」を再読してみる。特にどっちへの評価も高いメルヘン翁。なるほどこれは大爆笑である。ちびまる子ちゃんを関係なくして読めば大傑作だろう。それなりに力を入れて書いたに違いない。
 これはおもしろそうだと思うと同じ作家のは数冊まとめて購入する。ハマったときは一気に読めて嬉しさ倍増だ。彼女のエッセイも、誰かに絶賛された紹介文だけ読んで、まとめて何冊か購入したものの二冊ほど読んで疲れ切ってしまってそのままだった。この機会に読んでみるかな。

 時が経てば立場も気持ちも変わるから、本を読み返したとき捉え方も感じ方も変わる。それが良い方向へ変わったときは実に本は楽しいなと感じる。