踏まれても叩かれても…発泡酒

 初めて発泡酒か第3のビールかを飲んだときはお酒だと気付かなかった。
量販店でビールを買ったついでに価格からジュースだと思って一本買った。家に戻って飲んでみるとなぜか酔いが廻るので成分表を見てみると、ああ、もしかしてお酒?
「あれは立派なお酒ですよ」当時行きつけのスナックで話のネタにしたらマスターはうなづいて言った。「知らないで飲む人も多いんですよね」20年も前の話だ。

 発泡酒の新製品が毎週ぐらいに出ていたころに新しいもの好きの私は次々に買った。CMで盛り上がったところですぐに飲むせいか妙においしくってビールよりもはるかに上等に感じた。これに限るってんで毎日飲み続ける。すると不思議に当初の感激した味がなくなってしまうのだ。
最初はとびきりのを出してきて安定して売れてくると味を落とすのか?などと勘ぐってしまうくらい味が変わってくる。もちろんこれはビールでも日本酒でも起こることで多分どちらかと言えば私の舌のほうが変なのであろう。たとえばある料理屋で食べたのが美味しかった。また別の日に同じ店で同じものを注文して期待して食べ始めるとこの前と味が違う、っていうのはまだしも、チェーン店などでおかわりして「さっきと味が違う」というのも当たり前にあった。プレミアムビールも初めは感激してリピートするものの、何度か飲むうちに最初の感激がなくなって味が落ちたように感じる。
まあ最初の一杯が美味いせいだけなのか体調が変わって味覚も変化するのか、いつも飲む銘柄はたいがい決まっていても味よりも惰性でのんでるだけだったりする。

 7%

 ビール類を安売りしちゃいかんとか、みんなビールを飲みたいから酒税の格差をなくすとか、わけのわからん理論で発泡酒の税率があげられて、ビール・発泡酒関連が軒並み値上げになりました。発泡酒発泡酒でよさがあると思うんですけどね、お上には逆らえない。それなら発泡酒は撤退の方向で新製品を出さないのかと思ったら安くて酔えるよとばかりにアルコール度数が7%や8%がぞくぞく出てきて9%まで出てしまって一体どこまでいくのやら、度数の規制はないのか、と気をもむ始末。通常の発泡酒が4~5%でしたから1.5~2倍になるわけ。これはけっこう酔います。
肝心の味は? これはおおむね好評のようで飲みごたえやコクがあるといわれます。ただ個人的にはアルコール度数が増えた分、ヌル~としたアルコールが喉にまとわりつくようで、甘みも増したのかジュースっぽくも感じられます。慣れれば美味しく感じるのかな。でもじっくり味わう前に酔いが回って寝落ちします。これは酒に弱くなったのではなく、酔っ払ってはしゃぐことがなくなったからでしょう。
アルコール度数を高めるためには酵母のしっかりとした管理が必要とか高度な技術と手間ひまがかかるようです。こっそりアルコールを足し混ぜてるのかなと思ったのは失礼なことでした。

 親戚の法事などでせっかくみんな集まったときなど酒を飲めないのが残念でもある。田舎ゆえ自動車で移動する人がほとんどだからだ。ビールや日本酒を目の隅で捉えながら烏龍茶を注いでもらう悲しさは酒飲みにしかわかるまい。
ところがそれも最近変わりつつあった。会食に並ぶノンアルコールビールだ。わりと以前からノンアルビールはあったのだが最近のは本当にうまく感じる。ビールそのものよりうまいと言っても良い。同じ銘柄を買って来て自宅でもたびたび飲んだのだから気の迷いや体調のせいではない。安定して同じ味を保っている。しかも見た目も缶のデザインもほぼビールなので不思議と酔っ払った気になってしまう。もっと美味しいのがあるに違いない、調子づいて他銘柄を探すと<カロリー・糖質・ゼロ>をうたって「ゼロ」と名がついているビール・発泡酒も多くてややこしい。それでも流行りなのか幾種類かのノンアルビールを楽しむことができた。異常な猛暑の続く今年の夏、麦茶代わりに飲んだ昼間のノンアルビールはずいぶん助けになりました。
 こんなに美味しいのは当たり前。製造法はビールと一緒でアルコール分だけを後から抜くのだそうです。銘柄によってはフルーティーな味付けをして飲みやすくしてるのもありますが普通のが一番いいようです。純粋な麦芽の香りのみを楽しめるし変な甘みや雑味がない、糖質や脂質も0か少なめで、いつもの栄養指導の看護師も納得してくれるでしょう。

 とりあえず晩酌には発泡酒350ml缶を一本か二本、それ以上飲みたいときはノンアルでクールダウン。これで夜中の2時3時に起きてぼんやりすることもなくなり朝方はすっきり目覚められます。
そして余分な水分は早朝の自転車で吹き飛ばしてしまいます。