久しぶりに新車を買いに行ったらラシューズの店だった

 ぼんやりして前を走る車にぶつかりそうになったり、コンビニや銀行のガラスに突っ込みそうになったりするので今どきの安全装備が欲しくなった。遠乗りが増えたせいで燃費も気になるし、自動車税も割高になった。自動ブレーキのついたハイブリッドかノートe-powerでも買うかと考えながらうっかりスバルディーラーへ入ってしまった。
 中古車を10年乗り継いだのだから今回は新車を奢ったろう、とりあえず一番上のグレードで見積もりを頼む。といっても256万だ。ナビと諸費用入れて300万前後かな。グレードを下げれば値引きと下取りで250万ぐらいになるかなぁと考えていると、出てきた見積もりには目を疑った。「380万!」いったいなぜ?
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『あなたたち、お店を間違えたんじゃないの?ここには女工さんの着る作業着など置いてないんだけどね』秘書に抜擢されたペリーヌがラシューズ婦人の店で軽くあしらわれたような感じかな。
『あなたたち、お店を間違えたんじゃないの? この店は零細自営業者の乗る車は置いてないんだけどね』とでも思ってるのだろうか。
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 腰を抜かさんばかりに驚いてる俺に呆れたような表情で説明する営業マン。諸費用は3年後の車検整備費用まで入れて約40万。オプションはナビ関連だけで38万、純正ホイール&スタッドレスタイヤが20万、他に細かいのはよくわからんのだが合計で83万円。とりあえずオプションが多すぎる、スタッドレスタイヤは安売り店でいい。車検は他所で。ナビももしかしていらないかな…
「純正ホイールでないとかっこ悪いですよ」「純正のナビやカメラでないと具合が…」ひとつひとつケチをつけて譲ろうとしない。この調子では予算に近づくまでははるか遠い道のりだ。もしかして売る気がないんじゃないか?
あまりに諸経費が高すぎると言うと、「諸経費は最低でも100万は見てもらわないと」風速3メートルの鼻息で答える。
やはりこの営業はラシューズ。
 『ナビとバイザーとマットを付けて中くらいのグレードが欲しいんです』と言いたかったが
 『まあ難しいご注文ですこと。そんなのウチにあったかしらオホホホ』などとやり返されてはたまらない。隣に座っているのは年老いた母でロザリーじゃないのだから。
 考えさせてもらうから、と席を立って車に乗り込むとどこかの社長秘書と間違えたのか「お電話しますから」などと食い下がる。
いずれにせよ200~250万の予算で考えてたのに400万近い見積もりを出されて心は一気に冷えた。一生涯スバルなんぞ買うものかと心が決まったので「お金が無いのでポンコツの中古を買いますよ。俺には似合いのね」と答えて車を出した。バックミラーに映るラシューズ氏の顔が曇った。
 
 それからが忙しかった。燃費と安全装備にこだわって探すが最新の車は軽でさえハイブリッドやら自動ブレーキがつけられる。ノートやリーフも乗心地も燃費も良いのだが後ろが非常に見づらい。人気のSUVなど特にセダンからくらべると牢獄の窓から外をみるようだ。バックカメラや後方センサーがついてるからっていってもやはり目視でないと不安だ。
シビックセダンの1.5ターボの燃費と走りにも惹かれたが潜り込むような低いシート位置に断念。乗り降りのたびにスクワットしたり腰を痛めたり頭をぶつけたりは困る。セダン不況で選択肢は少ない、クラウンが半額ならいいのに。
 悩んだ末に結局スバルに戻ってきたが新車は意地でも買わない。ネット中古車店で探して北の大地へと注文を入れた。値引きは300円だけで新タイヤもドラレコのサービスも断られた。2年落ちにもかかわらず新車に比べてそれほど安くもない。無駄に意地を張ることもなかったかなと後悔した。

 送られてきた契約書にサインして送り返してホッとした頃、注文した車種が10月には新型が発売になって半自動運転みたいのが搭載されるというニュースを見る。マイチェンとはいえ、あのままディーラーで新車を購入してたら、新型の並ぶ店内で380万の旧型車を納車され泣いている自分を想像して恐怖に凍りつく。
それを考えるとまあまあの選択だったろう。


 あ~早く来い来い新しい中古車。